よくある質問

1次形状係数が5未満のゴム支承は使用できないのでしょうか?

「道路橋に関する講習会」講義要旨平成16年度1-32ページに回答されておりますので参照下さい。道路橋支承便覧(平成16年4月)で提案している新しい照査式を用いる場合の制限値は5程度以上としており、小型形状のゴム支承を用いる場合に5未満を用いる必要がある場合には、服部・武井式を適用し照査すれば問題はありません。

2次形状係数が4程度とは どこまで小さく出来るのでしょうか?
3.5など四捨五入で4ならば可能でしょうか?

支承便覧P140に解説があり,地震時水平力分散支承や免震支承の場合,地震時の許容せん断ひずみ250%のとき,移動方向の辺に関する二次形状係数を4程度以上とすれば安定した支持機能を得ることが出来るとしています。
従って,2次形状係数を4以下とした場合,地震時に安定した性能を確保できるせん断ひずみ以内に抑えることで使用は可能です。
(例えば S1=3では,γea≦3/0.016=187%)

支承便覧のP.14.8,下から1,2行目にあるように,一次形状係数が5未満で,式(3.6.33) の服部・武井の式を基に式(3.6.31)の圧縮ばね定数を算出、それにより式(3.6.30)の圧縮量を算出した場合も,fv =1.3は用いるのでしょうか?

本質問に対する回答は「道路橋に関する講習会」講義要旨平成16年度1-33ページに以下のように回答されておりますので参照下さい。
支承便覧のP.146にありますように,fv =1.3は圧縮ばね定数の精度と製品のばらつきに対するものであり,これは式(3.6.32)にある縦弾性係数の算出式の基となる参考資料-13の実験結果のばらつき 30%に対応しています。したがって,一次形状係数が5未満で,かつ,理論式である式(3.6.33) の服部・武井の式による場合は,fv =1.3を考慮する必要はありません。

積層ゴム支承に用いられるゴム材料の耐久性について

積層ゴム支承は橋の供用期間,橋を安定的に支えその供用期間に生じる,日常的な交通荷重とたわみおよび振動,温度変化等によるせん断変形の繰返しに加え,大地震から橋を守るために,耐用年数はその橋と同等であることが望まれます。これまで,橋とその他付属物の耐用年数についての規定はなく,漠然と耐久性,耐候性についての議論がなされており,その中で,支承部構造はどの程度の耐用年数が妥当なのかが不明でした。
 道路橋示方書・同解説(平成14年3月)では,一定の知見が得られているものについては設計目標期間として100年を目安に設定され,審議の過程においてゴム支承100年,鋼製支承30年程度ではないかとの議論がなされています。
 ゴム支承協会として,耐用年数100年に対応する支承構造と材料を念頭に置いてゴム支承の開発に当たっているところです。
 一般的にゴム支承の耐久性が不明確であり不安を持たれていましたが,平成7年兵庫県南部地震によるゴム支承では致命的な損傷が無かったことが報告されており,供用後25年程度経過したゴム支承も含まれるため,性能低下の影響は小さいものと判断されます。
 しかし,ゴム材料は経年変化に伴い性能の変化は避けられないため,既在の研究等を参考とし,積層ゴム供試体による加熱促進老化実験等によることが行われます。

1.耐久性評価の実例
 平成14年3月制定の道路橋示方書において,橋に求められる耐久期間は100年をめざすことが解説されましたが,ゴム支承についてどの程度が妥当なのかは示されていません。しかし,支承部の更換作業等を考慮した場合,橋の耐久期間内にある一定の性能水準を保つことを目標とすることを想定することが良いと判断しています。国内では鬼怒川橋梁の支承として1961年に設置され,17年後に行なった支承の材料分析による予測では85年~200年と報告されています(表面の劣化と内部ゴムの劣化状態の評価法により予測寿命に差が出ます)*1)。海外ではオーストラリアのメルボルンで鉄道橋の支承として1889 年に設置され,100年経過した現在も使用されています。この支承のゴム材料に関する調査が設置後96年目に行われ,ゴムの表面は劣化し物性が低下していますが,表面から5mm以上の内部では物性の変化がほとんど見られず劣化の進行がないことが確認されています*2)。本格的な積層ゴム支承として歴史的に最も古いとされているのが,1956年にイギリスのリンカーン市にある道路橋ぺルハム橋に使用された天然ゴム積層支承です。この支承の約20 年後の調査では,周囲の鋼材が腐食によって欠落していたのにもかかわらず,オゾンによる表面クラックも皆無であったと報告されています*3)。その他に道路公団試験所報告(昭和58年度)に実橋で7年ないし10年程度使用したゴム支承を用いた耐久性能の報告があります*4)。

2.加熱促進劣化試験による経年変化の推定
 積層ゴムの経年変化を推測する方法として,加熱促進劣化試験を行なうことが多いです。
 この試験は,長期間の経年変化を温度と時間の換算により高温短期間で同程度に劣化させて評価するものです。アレニウス式により経年変化の活性化エネルギーを算出し,加熱を行なうものです。活性化エネルギー算出時の物性の劣化の程度はゴムの種類によって変化するため,一定値として定まっていませんが,現在,橋梁・ビル免震支承としてISO(ISO/CD 22762-1)*5)およびJIS(経済産業省)の作業が進行しており,近年中に試験方法が確定する予定です。一般の天然ゴムでは環境温度を変えた(60℃,70℃,80℃)場合のゴム特性変化を模擬的に求め,積層ゴム供試体の短時間促進条件を設定し,経年変化を供試体で推定するものです。実験結果では,80℃加熱促進試験において,ゴムの伸び変化-20%を寿命とした場合150年~230年程度となりました。実際に使用する支承と供試体の形状差により過熱促進劣化試験は条件が厳しいとされていますが,供用100年程度では性能の大幅な変化は小さいと推測されています。

3.耐久性の確認方法
 現在,実際に供用している橋*6)からゴム支承を抜取り,ゴム物性のみならず,積層ゴム支承の性能(せん断ばね定数,減衰定数など)変化を調査し,加熱促進劣化試験による経年変化の推定との検証を経済産業省,基準承認研究開発助成事業として実施中です。また,ビル用支承についても実験中であり,本結果をISO(ISO/CD 22762-1~3)に盛り込むことが予定されています。

4.品質保証と検査
 橋梁の支承部は,荷重伝達,変位追随などの機能を保持することが要求される部材です。特に平成7年兵庫県南部地震では,支承が損傷し,上下構造に大きな損傷が生じた場合も少なくありません。また,腐食等や老朽化により鋼製支承の機能の一部が失われていたことが支承部の損傷の程度に影響を及ぼしていたとみなされる事例があった等,支承部の機能損失は橋の上下部構造に及ぼす影響も無視できません。このような点から,支承部も橋を構成する主要部材の1つとして位置付けられ,所定の力を伝達するための性能や変位に追従できる構造と性能が求められます。そのため,支承部の機能保持には,日常の維持管理はもとより製造時において,支承部が橋を構成する主要な構造体として要求される性能を満足していることが必要です。
 このため,支承の製造時において支承に要求される性能を確保し,保証するための日常的な品質管理を十分行うとともに,各種試験により性能が満足されていることを確認します。
 積層ゴム支承本体は,使用材料,製造(加硫)過程や製造時の条件,寸法,形状などにより特性に変化が生じやすい傾向があります。そのため安全性能や使用性能を検証するための品質管理を行います。また耐久性や耐候性の検証は,ゴム支承本体に使用するゴム材料の試験片などで行います。
 ゴム支承本体の性能として,せん断剛性(せん断ばね定数・等価剛性)が「道示Ⅴ15.3」の規定である,設計値に対して±10%以内であれば,上部構造の加速度,変位応答などの変動幅は性能上問題にならないと考えられます。なお,日本道路公団第二東名高速道路ゴム支承の特性に関する技術検討(家村委員長ほか)では,積層ゴム支承の製造時において支承に要求される性能が確保されていれば,ゴムの剛性変化(剛性アップなど)を含むによって橋の安全性に影響がないことが報告されています。
 従って、積層ゴム支承の製造時において性能確認されていれば、経年変化によるゴム支承の劣化も含まれると考えています。

参考文献

   *1)宇佐美民雄ほか:日本ゴム協会,54(3),174;(12),778(1982)
 *2)A.Stavenson,Rubber Conferenece’85,Koyoto,18D19,680(1985);K.AB-Malek,
 A.Stavenson,Rubber Conferenece’87,Harrogate,No.48A,171(1987)
 *3)P.B.Lindley: 日本ゴム協会,48,91(1975)
 *4)石橋・中村・宮川:道路橋ゴム支承の耐久性に関する載荷試験, 日本道路公団試験所報告(昭和58年度)
 *5)免震ゴム支承(橋梁・ビル)のISO 規格化委員会資料(ISO CD22762-1~3)
 *6)山あげ大橋の支承更換工事 fib2002 京都会議資料
 *7)橋梁・ビル免震用積層ゴムの研究開発および標準化

基準承認研究開発助成事業(経済産業省) 平成12年度~平成14年度

   1.免震構造設計指針 1989制定 日本建築学会
 2.免震用積層ゴムハンドブック 社団法人 日本ゴム工業会 2000年1月25日
 3.道路橋示方書・同解説(Ⅰ・Ⅴ) 平成14年3月
 4.兵庫県南部地震における道路橋の被災に関する調査報告書 平成7年12月

矩形のゴム支承で橋軸方向の変形のみを考慮した設計となっているのですが、橋軸直角方向に変形が生じてしまった支承があります。ねじれ状態での耐力の照査方法あるいは、橋軸直角方向への変形に対する許容の考え方を教えてください。

ゴム支承の水平方向の変形に方向性はありません。橋軸方向、橋軸直角方向並びに斜め方向にせん断変形しても、ゴム支承事態に問題はありません。照査方法としては、ゴム厚さに対して合成された水平変位量が、ゴムの許容せん断変形量(常時)を満足している範囲ならば、使用に問題はありません。(日本道路公団技術情報 第74号 1984年10月)

パット型ゴム支承について
鉄筋コンクリートT桁橋の補修設計を行っています。既設橋梁は、桁ごとにパット型支承が置いてありますが、支承条件(固定・可動)がわかりません。パッド型ゴム支承の幅の違いで、固定と可動を見分けることが可能でしょうか?

支承の平面寸法は、鉛直荷重によって決まるので、支承の幅の違いだけでは、支承条件(固定・可動)の判断はできません。一般的には、ゴム厚さに差異がある場合、厚い方が可動、薄い方が固定となります。
また、橋梁一般図(側面と断面)があれば判断可能な場合があります。
さらに、手掛かりとして、橋の写真(全景・断面・支承部など)があれば判断可能な場合があります。固定用のアンカーバーの直径、アンカーキャップの遊間などにより判断が可能な場合がありますし、伸縮装置の型格によって、判断できる場合もあります。(型格が大きいほうが可動。)

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